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鉄分不足の貧血

伊藤史子

サイト監修:あやこいとうクリニック 伊藤史子先生

鉄分不足による一般的な貧血といえば「鉄欠乏性貧血」。女性の貧血のほとんどが、妊娠・出産はもとより、筋腫や子宮内膜症などによる、月経過多が原因で生じる、このタイプの貧血です。

貧血は、何が原因でおきた貧血なのか、その結果どのような症状がでるのかを把握することが、治療に直結するため、非常に重要です。

原因によって改善方法も異なりますから、鉄欠乏性貧血には、効率的な鉄分の摂取方法を紹介しつつ、原因に応じた改善法についても説明していきます。

鉄欠乏性貧血とは?

1回の月経で、20~25mgの鉄分を失う有経女性に多く認められる、鉄不足が原因で起こる貧血です。特に、子宮内膜症や子宮筋腫、月経不順によって引き起こされる、月経過多に苦しんでいる女性は要注意。

知らず知らずのうちに、徐々にとはいえ、確実に貧血が重症化してしまう可能性があります。出血によって鉄分が不足している状況を、『小球生低色素性』と呼びます。

鉄分は身体中の細胞に酸素を運ぶ、赤血球中のヘモグロビンと呼ばれる酸素運搬能の要を構成する栄養素です。

ヘモグロビンは、肺などの酸素濃度の高いところでは酸素と結合し、酸素濃度の低い抹消の組織では、酸素を手放す習性があり、身体中の細胞へと酸素を届けます。

しかし、小球性低色素性に陥ると、運ぶことのできる酸素量が少量となり、体が酸欠と同様の状態となるのです。こうなると、より酸素を必要とする脳や、元々酸素が運ばれにくい手足の末端などから影響が現れます。そのため、少しの負荷で動機やめまい、頭痛、寒気などに襲われることとなります。

女性以外でも鉄欠乏性貧血に注意!

月経以外でも、赤血球自体が痔核や胃潰瘍などの慢性的な微量出血が原因で継続的に失われたり、摂食障害や過度のダイエット、胃酸の分泌低下から鉄分の吸収不良に陥り、同様の症状が現れます。

最近では有経女性に限らず、ピロリ菌の感染に起因する胃潰瘍や、大腸などの消化管潰瘍の他、炎症、ポリープによる吸収障害が増えています。さらに中高年以降では、癌が原因となって生じる微量出血に、続発的に鉄欠乏性貧血を認めるケースも見られます。

出血以外の鉄欠乏症貧血とは

出血以外の鉄欠乏性貧血の原因は大きく分けて3つあります。

酸素の必要量と供給量のバランスが崩れている…成長期や妊娠期など

1つ目は赤血球の需要=酸素の必要量と、供給量のバランスが崩れた場合です。

日常生活の中ではなかなか起こることのない状況ですが、成長期や妊娠期など、体が積極的に新しい細胞を作り出そうとすると、たくさんの酸素が消費され、貧血に陥る可能性があります。

また、大きな怪我や病気、手術の後に体が自己回復しようとする際にも、同様の症状が現れる場合があります。

赤血球の破壊や鉄の喪失…激しい運動や急な発汗など

2つ目は激しい運動によって赤血球の破壊や、発汗による鉄の損失量の増加により発生するパターン。

適度な運動は血流を活性化させますが、あまりに激しい運動を行うと、赤血球が破壊され、貧血の状態となります。また、血液から作られる汗が大量に出た場合も、鉄を損失しているのと同様ですので、注意が必要です。

たんぱく質やビタミンB群などの栄養不足…ダイエットや偏食など

3つ目は過度なダイエットや偏食で生じる、たんぱく質やビタミンB群などの栄養不足です。

たんぱく質は植物性のヘム鉄を、人間の体内で使用できる形にかえるために必要不可欠。ビタミンB群も鉄分の吸収を助ける栄養素のため、これらが不足すると、いくら鉄分をとっても貧血の症状が現れます。

妊娠に伴うつわりの際も栄養不足に陥りがち。1つ目の原因とともに、注意すべきです。

鉄欠乏症貧血の症状

一般的な鉄欠乏症貧血の症状には、頭痛やめまい、立ちくらみ、動悸などの酸欠症状や、冷えや眼瞼結膜の白色化、顔面や唇の血色不良、爪床の青白色化などの血流低下症状があります。それに加え、しびれや痛みなどの虚血による症状がでることも多いです。

ただし、ゆっくりと貧血が進行した場合は、ただの体調不良と取り違え、自覚しにくいことが多いことも。貧血気味の方が常に自覚しやすい症状として、爪の薄化や脆弱化が挙げられます。特に、スプーンネイルと呼ばれる、特徴的な爪変形は、診断の大きな助けとなります。

また、頭皮や粘膜、皮膚の血流が長期間低下することから、毛髪の軟毛化や薄毛が生じたり、ちょっとの刺激で声枯れや上気道炎を繰り返したりします。傷の治りやアザの回復の遅延、化膿のひどいニキビの原因となる場合も。

意外な症状としては、繰り返す口角炎や氷食症、嚥下に関する違和感(嚥下障害)、原因のわかりにくい鬱症状の裏に、鉄欠乏性貧血が隠れている場合もあるのです。

こうした症状が、生理が始まることで悪化する場合も、貧血診断へのヒントとなるでしょう。

大球性貧血と正球性貧血とは

その他の貧血として、大球性貧血と正球性貧血の分類があります。

大球性貧血

大球性貧血は、赤血球数やヘモグロビン値に異常がないにもかかわらず発生する貧血です。赤血球自体の機能が弱く、酸素を送る効率が低下してしまいます。

胃切除後の患者さんなどに多く見られ、別名悪性貧血とも呼ばれます。その他、DNAの合成に必要なビタミンB12や葉酸の不足が原因で生じることも。

DNAの合成が頻繁に行われる妊娠期などでは、ビタミンB12や葉酸を積極的に取り入れることも必要です。

正球性貧血

正球性貧血には、3つのパターンが存在します。

  • 外傷や手術時など、急激な大量出血によって生じるもの。
  • 何らかの理由で赤血球が壊れやすい状態となり生じるもの。
  • 血球製造工場である、骨髄に障害がある為に、必要な血球数を産生できず生じるもの。

いずれの貧血の鑑別も、まずは採血検査なくしてはわかりません。原因不明の貧血症状が出る方は、一度医療機関で、詳細な採血検査を受けてみてください。

特に、成長期や活動量・運動量の多い子供たちには、貧血の知識がないので、近くにいる大人の観察が、見逃しの予防につながります。

鉄欠乏性貧血の治療

鉄欠乏性貧血の治療としては、貧血のレベルにもよりますが、鉄分を多く含む食材の摂取が基本となります。日頃からレバーやマグロなど、動物性のヘム鉄を含む食材を積極的に摂取すると良いでしょう。

この際に、赤血球の材料となるたんぱく質やビタミンB群を、鉄を含む食材と一緒に摂取したり、鉄の吸収をよくする作用のあるビタミンCなどと一緒に摂取することを心がけてください。

コーヒーや紅茶など、鉄の吸収阻害作用のあるタンニンを多く含む食材との同時摂取はできるだけ避けるよう努めてください。更に、カルシウム、フィチンを多く含む食材との同時摂取も控えるように、工夫できるとより効率的でしょう。

実際の医療機関での、一般的な治療法としては、胃には負担となりますが、高濃度での鉄剤の内服や、内服が不可能な場合を含め、重症度に応じ、必要であれば、血液でのモニタリングを行いながら、鉄剤の注射が用いられます。

勿論、貧血の原因となっている子宮内膜症や筋腫、潰瘍や癌などの疾患が存在する場合には、その基礎疾患に対する、ピロリ菌の除菌、ホルモン補充や手術と並行して、内視鏡や止血剤などを用いた止血対策が先決となります。

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